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CP対称性の破れの測定

粒子にはそれと反対の電荷を持つ反粒子と呼ばれるパートナーが存在します。 例えば、物質を構成する陽子や中性子などのバリオンと呼ばれる粒子には反陽子や反中性子といった反バリオンと呼ばれる粒子が存在します。 ビッグバンによって開闢した宇宙の初期、バリオンと反バリオンは同じ量だけ生成されると考えられますが、現在の宇宙ではバリオンが圧倒的に多く、反バリオンはほとんど観測されません。 この非対称がなぜ起きたのかは未解決の謎となっています。しかし、それが起きるためにはいくつかの条件が必要であることが知られており、その一つがCP対称性の破れです。

対称性とは
CP対称性 [クリックして拡大]

C対称性とは粒子と反粒子を入れ替える対称性(Charge conjugation)であり 、Pとは鏡映(Parityの)対称性です。「ある系がC対称性を持つ」とは、粒子を反粒子に置き換えた系でも同じ物理現象が同じ確率で起きるという事を意味し、「P対称性を持つ」とは、鏡映しの系において同じ現象が同じ確率で起きることを意味します。CP対称性があるとは、粒子と反粒子をいれかえ、鏡映しにした世界で物理現象の発生確率が同じであるということを意味します。

物質と反物質の非対称性を説明するには、バリオンにおいてCP対称性が破れている必要があります。すでにバリオン自体のCP対称性が破れていることは知られていますが、その破れは非常に小さく、これだけで宇宙の物質・反物質の非対称性は説明できません。そこで、バリオンのCP非対称性の起源はニュートリノのCP非対称性であるという理論が提案され、有力な仮説の一つとして考えられています。

ニュートリノのC対称粒子は反ニュートリノです。もし、ニュートリノと反ニュートリノについて、ある現象の起きる確率に差があることが検証されれば、ニュートリノにおいてCP対称性が破れていることを示すことができます。

CP対称性の測定
ニュートリノと反ニュートリノのニュートリノ振動の差を測定する。[クリックして拡大]

ハイパーカミオカンデ実験では茨城県東海村のJ-PARC加速器によって作られたミューオンニュートリノビームおよび反ミューオンニュートリノビームをハイパーカミオカンデに打ち込み、それが電子ニュートリノもしくは反電子ニュートリノへと変化する確率の差を調べようと計画しています。CP対称性がニュートリノと反ニュートリノの間で破れている場合、その破れに従ってニュートリノ振動の確率の差があらわれることが予想されます。

ニュートリノの混合の度合いを表す「振動角」のパラメータは現在までにすべて有限な値を持つことが実験から明らかになっており、その値が比較的大きい事も分かっています。 このことからニュートリノと反ニュートリノの振動の違いを調べることによりCP非対称性を実験的に検証出来るという期待が高まっています。 CP非対称性の度合いはある角度δを用いて表されます。最もCP非対称の効果が顕著に見えるのは±90°の場合ですが、その場合、ハイパーカミオカンデは約10年の観測により、8シグマの有意性でCP非対称を発見できると期待されています。またδの取り得る値の75%の場合について同じく約10年の観測で3シグマの有意性でCP非対称性の発見できると期待されています。