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ハイパーカミオカンデに向けたソフトウェアの開発

ある物理に対してHKがどのような感度を持っているのかを調べるためには、ソフトウエアの開発が必要不可欠です。ソフトウエアはHKの詳細なデザインを決定するのに重要な役割を担います。HKでは約40,000本の光センサーが使われる予定です。光センサーにはいくつか候補があって、その個々の性能は測定することができるのですが、実際タンクに40,000本取り付けてニュートリノ反応の見え方にどのような違いが現れるのかというのは、なかなか頭で考えても予想するのが難しいのです。こうした場合、コンピュータ上で仮想的にHKを作って実験を行う「シミュレーション」という手法を用います。

この仮想実験では、ニュートリノがどのように反応して様々な粒子を生成するかという物理事象のシミュレーションと、生成された粒子が検出器内でどのように捕らえられ、最終的に信号としてどう見えるのかを模式する検出器シミュレーションに分けられます。前者の場合、物理は普遍的なものなので、SKやT2K実験で用いられているものを使うことができます。検出器シミュレーションにはタンクの大きさ、形状、水の光学的な特性、光センサーの性能やそれらの信号の読み出し方法なども組み込まなければなりません。検出器シミュレーションは、欧州原子核研究機構(CERN)で開発されたGEANT4というシミュレータをベースにして、アメリカのDUKE大学が中心にHKや他の水チェレンコフ検出器にも対応できる汎用性の高いシミュレーションを開発しました。このソフトウエアでは、タンクの大きさや光センサーの数を容易に変更でき、さらに光センサー部分や読み出し部分をモジュール化して入れ替えることにより、様々な検出器のデザインに対応できるように作られています。図1はHKシミュレーションの1例です。

図1:HKタンク中心から側面に向かうミュー粒子のシミュレーション。黄色の点が受光した光センサーを示す。

検出器の性能を知るためには、光センサーの情報を集め、光を出した粒子の個数、生成点、方向、運動量などの物理量を再構成するソフトウエアも必要です。SKで従来使われている手法では、各物理量を一つずつ順番に決めていましたが、予想される光量分布を光センサーの情報にフィットさせることにより物理量を一度に決定することのできる、新しい手法がHKに向けて開発されているところです。新しい手法では、今まで使われていなかった「光センサーが受光しなかった」という情報も用いて、従来よりも精度良く物理量を決定することができると期待されています。

図2は、様々な運動量の電子とミュー粒子をHKシミュレーションで生成し、それを新しい手法で再構成した時の分解能を示しています。HKで使われる光センサーは1光子を検出する能力が2倍に上がっているので、SKと同じように壁面を光センサーで40%覆った場合の分解能はSKよりも大きく改善されることが示されています。

図2: 電子(左図)とミュー粒子(右図)の運動量(横軸)とその分解能(縦軸)。緑はSKの性能で、赤はHKの壁面を新型光センサー14 %覆った場合、青が40 %の場合を示す。