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ニュートリノとニュートリノ振動

ニュートリノとは?

ニュートリノ質量の順番
宇宙を構成するすべての物質はクォークとレプトンからできている。[クリックして拡大]

宇宙を構成するすべての物質は、クォークとレプトンという素粒子の仲間から形成されています。例えばクォーク3つからできる陽子1つと、レプトンの仲間である電子1つを組み合わせて水素原子が作られます。

ニュートリノは電荷を持たないレプトンで、他の物質とほとんど反応しません。地球すら容易に貫通してしまうほどです。そのためニュートリノの観測は非常に難しく、長年その性質は謎に包まれていました。

ニュートリノ質量の順番
ニュートリノは、「フレーバー」と「質量」による分類がある。[クリックして拡大]

ニュートリノは身の回りを光速で飛び交っており、私達の体を1秒間に約1兆個も突き抜けていきます。しかし、ニュートリノは他の物質とほとんど反応しないので、私達がそれを感じることはありません。

ニュートリノには電子ニュートリノ、ミューニュートリノ、タウニュートリノの3種類があります。これは「フレーバー」による分類です。

ニュートリノ質量の順番
「フレーバー」と「質量」で分類されたニュートリノは互いに混ざり合っている。[クリックして拡大]

一方、ニュートリノは「質量」という分類で分けることもできます。m1, m2, m3という3つの異なる質量を持つ、ニュートリノ1、ニュートリノ2, ニュートリノ3の3種類です。フレーバーによる分類と質量による分類は互いに混ざり合っており(右図参照)、フレーバーと質量の固有状態は同時に決めることはできません。

つまり、電子ニュートリノ、と言ったときには、ニュートリノ1、ニュートリノ2, ニュートリノ3が混合した状態であるということです。これをニュートリノ混合と言います。

ニュートリノ振動

ニュートリノ質量の順番
異なる振動数を持つニュートリノの波が合成されてうなりが生じ、空間を飛ぶ間にニュートリノのフレーバーが移り変わる。[クリックして拡大]

ニュートリノは、「粒子」であると同時に「波」としての性質を持ちます。そのため、それぞれ異なる質量の固有状態を持つニュートリノ1、ニュートリノ2, ニュートリノ3は、それぞれ異なる振動数を持つ波として空間を伝搬します。ニュートリノのフレーバーは、質量の固有状態の波の重ね合わせとなり、ニュートリノが空間を飛ぶ間に波の位相が変化し、フレーバーの種類が移り変わります(右図参照)。

この現象をニュートリノ振動と呼びます。ニュートリノ振動はニュートリノが質量を持ち、かつ、ゼロではないニュートリノ混合があるときに起こる現象です。

ニュートリノ振動は、1998年にスーパーカミオカンデ実験で発見されました。宇宙から飛んでくる宇宙線が大気と衝突して生成された、大気ニュートリノ(ミューニュートリノ)を観測すると、検出器の下からやってきたミューニュートリノの数は、上からやってきたミューニュートリノの数の半分しかありませんでした。ミューニュートリノが地球の内部を通って来る間に、タウニュートリノに変化してしまったためです。

ニュートリノ振動の発見により、ニュートリノがわずかながら質量を持つことが証明されました。それまではニュートリノの質量は0だと考えられていたので、その発見は素粒子の枠組みを説明する「素粒子標準理論」に見直しを迫る、画期的な結果でした。

大気ニュートリノ振動の発見
スーパーカミオカンデによる大気ニュートリノ振動の発見。地球を通り抜けて検出器の下から来るミューニュートリノの数は、上から来るミューニュートリノの数の半分しかなかった。[クリックして拡大]

ニュートリノ振動はその後、太陽ニュートリノや人工ニュートリノビームでも確認されました。

ニュートリノの混合は、3つの混合角θ12, θ23, θ13と、CP位相のパラメータで表されます。これまでのニュートリノ振動の研究から、3つの混合角とニュートリノの質量の2乗差m12-m22, m22-m32が測定されました。

残る未解明の問題は、CP位相のパラメータ、ニュートリノ質量の順番、ニュートリノ質量のそれぞれの値です。また、ニュートリノの質量がなぜ電子やクォークの質量に比べて100万分の1以下と非常に小さいのかという問題は謎に包まれています。

素粒子のしくみを説明する標準理論は、ヒッグス粒子の発見により完成されたとみられています。しかし、これまでわかったニュートリノの質量や混ざり具合は、なぜかクォークのそれらと比べて大きく異なり、素粒子の標準理論のほころびだと考えられています。つまり、標準理論は全ての物理現象を説明する完全な理論ではなく、標準理論を超えた未解明の素粒子理論が存在する可能性を示唆しています。統一理論と呼ばれるものなどがその候補だと考えられています。ニュートリノ振動実験は、統一理論など、未解明の素粒子理論を解明するための重要な手がかりを与えると世界中の研究者から期待されています。